修士論文研究

2022年度

  • RC梁の構造性能に及ぼす貫通孔の配置の影響に関する研究:
      鉄筋コンクリート梁に配管用などの貫通孔を設けた場合、貫通孔の周囲を補強するため、貫通孔のない部分の影響が懸念されます。この研究では、梁スパンの両側に1つずつ貫通孔を設けた場合と、梁スパンの片側だけに1つの貫通孔を偏心させて設けた場合を比較するために、加力実験と有限要素法(FEM)による解析を行いました。その結果、貫通孔は応力伝達機構を変化させるため、貫通孔の数だけでなく、配置にも配慮が必要なことが分かりました。

2021年度

  • MEMS加速度センサを用いたRC骨組の静的載荷実験における変形測定:
      近年、スマートフォンなどにも加速度センサが搭載され、機器の向きや姿勢が簡単に分かるようになってきました。その技術を建物の変形測定に応用しようというのが、この研究の目的です。加速度センサを建物の柱などに設置していれば、重力加速度の向きに対する柱の傾斜を測定できます。建物の設計では、構造体をモデル化して構造計算が行われます。モデル化では、構造部材の変形を仮定した骨組みが用いられます。本研究では、実大のRC骨組み試験体の加力実験において、加速度センサによる多点観測を行いました。加速度センサの回転角から、構造体のモデルと同様な方法で骨組みの変形を実測し、その精度を確認しました。
  • 梁端部に開孔を有するRC基礎梁の応力伝達に関する実験研究:
     鉄筋コンクリート梁には配管などのために貫通孔が設けられます。通常は梁端部の貫通孔は避けますが、基礎梁のように地震を受けても梁端部が損傷しないように設計された部材では、梁端部に貫通孔を設けるニーズがあります。本研究では、せん断破壊先行型の基礎梁試験体を用いた加力実験により、梁端部の貫通孔が部材性能に与える影響を把握しました。
  • RC梁の上端筋と下端筋に用いた重ね継手の付着性状に関する実験的研究:
     鉄筋コンクリート構造では、通常、鉄筋を継ぐことで連続配置させます。継手の種類はいくつかありますが、本研究で対象としている重ね継手は、鉄筋を重ねてコンクリートとの付着で鉄筋の応力を伝達する仕組みになっています。本研究では、重ね継手を有する梁試験体の加力実験を行い、ひび割れ性状や付着性状について考察しました。
  • 2段配筋された引張鉄筋群の局所付着破壊に関する実験研究:
     鉄筋とコンクリートの間の付着についての研究は古くからなされており、コンクリート内に直線定着された鉄筋を引き抜く実験で付着性状を把握してきました。本研究は、近年増えている多段配筋に着目し、定着長さが異なる鉄筋が混在する場合について実験しました。実験結果は、局所的な付着破壊が観察され、その性状について考察しました。

2020年度

  • 貫通孔と鉄筋のカットオフ・重ね継手を有するRC 梁の構造性能に関する実験研究:
     鉄筋コンクリート梁では、主筋のカットオフや継手のほか、配管のための貫通孔を設けることがあります。設計ではカットオフ筋の付着、通し筋の継手、貫通孔のせん断耐力をそれぞれ検定しますが、これらの複合的な影響を考慮したほうが望ましいです。この研究では、貫通孔を有する梁の繰り返し加力実験を行い、鉄筋のカットオフ、重ね継手が与える影響を検討しました。
  • 2段配筋RC梁の主筋カットオフに対する補強方法の解析的研究:
     鉄筋コンクリート梁では、スパン途中の曲げ応力の小さくなる箇所で鉄筋をカットオフすることがあります。梁のカットオフ位置では、鉄筋量が不連続となることで弱点となる場合がありますが、鉄筋のカットオフに対する有効な補強については不明な点が残されています。この研究では、過去の実験資料の分析とFEMによる解析により、鉄筋のカットオフに対する効果的な補強方法についての検討を行いました。
  • 地震動を受ける鉄骨置屋根構造のRC架構の構面外挙動に関するFEM解析:
     鉄骨置屋根構造とは、鉄骨トラス屋根がRC構造などの下部架構によって支持されている構造形式で、学校体育館などに使われます。その構造特性から、地震動を受けると下部架構の面外に応答変位が大きくなります。2016年の熊本地震でも被害が報告され、縮小の部分架構試験体を用いて被害を再現する振動実験が行われました。この研究では、振動実験をFEMモデルで解析し、面外応答を増大させる要因について分析しました。